死へのファストパス

くそっ!見えない!

不意に雨が振り始めた。まともに目を開けられず視界は一気にゼロ。何かが少しでも間違えば途端に死だ。がむしゃらに、貪欲に生にしがみつかなければ容易に死がその手を伸ばし黄泉へと引きずり込もうとする。バイク乗りにとっての不意の雨、それは決して嬉しくない死へのファストパスだ

くそっ!どうすれば!くそっ!

五感を研ぎ澄ます。遮られた視界を残された感覚器官で補う。
風切り音に混ざるかすかな音に耳を傾け、掌と指先で触れるアクセルとブレーキに全神経を集中する。路面のかすかな轍、白線に乗ったときに滑るタイヤを体全体で感じる。そして匂い。アスファルトの湿った匂いに混じってわずかに他の匂いを感じることができる。道路脇の草木の匂い、トラックのディーゼル排気、周囲の匂いに集中する。そのときだ、

「ん!なんだ!この匂いは!ん!これは!あの匂い! くそっ!なんなんだ! 」

不意にあの匂いがした

「んんっ!?まさかこんなところで!なぜだ!くそう!見えない!」

あの匂いだ。これはあの匂いに間違い無い

「くそう!見えない!少しでも周りを見渡すことができれば!」

奪われた視界を呪ったところでどうしようも無い。我々バイク乗りは自然に対して恐ろしいほどに無力だ。自然は時に死と手を組み、容赦なく脆弱な者(バイク乗り)の生を奪おうとする。

「アレの匂いだ!くそう!!よりによって こんな時にアレの匂いなんて!」

濡れた路面の轍でハンドルをとられる

「くそっ危ないっ!見えない!何も見えない!何も見えないところにあの匂い!アレの匂いがする!!」

周囲の車が悪魔に見える。少しでも接触したらアウトだ。死だ。

「くそう!なんなんだよ一体!なんであの匂いがするんだ!何も見えない!くそっ!何も見えない!」

死の匂いなのか。これまでかと思ったその時に赤信号で止まることができた。
振り向いた先に

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