夏の終わり方、覚えてる?

夏の終わり方、覚えてる?

メリッサがふと呟いた。昨日の夕方、風呂上がりのメリッサを拭き上げているときのことだった。現在様々な言葉を覚えようとしているメリッサは時折、意図せず意外なほどに情緒的な言葉を発することがある。

夏の終わり方ね。俺はもう忘れちゃったかな。メリッサはどうやって夏が終わると思う?

うーん、なんかね、あのね、うーん、うふふ

パジャマに着替えたメリッサは夏の終わり方について曖昧にしたまま、向こうへ行った。脱衣所に一人残されメリッサの言った「夏の終わり方」について考えていた。

脱衣所から戻ると先に風呂から上がったクリストファーが網戸越しに夜風にあたりながら、暗闇になりきってしまう前の濃紺の夜空を見上げていた。横でキャロラインが、もう涼しいね。秋だねと言っていた。メリッサは洗い髪も乾かさず畳にぺたんと座りお気に入りの図鑑を眺めていた。時折抜ける夜風が涼しい。風呂上がり、夕飯前のいつもの光景から夏がいなくなっていた。

勝手にやってきた夏は今年もいつの間にかいなくなっていた。そうして様々な出来事があった林田家の夏も終わった。夏が終わるのは切ない。寂しい。だからこそ次の秋、冬から春を超えて来年の夏に思いを馳せ、様々な出来事に期待をすることができるのだ。

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